絶景の山の写真を撮るために留意したい夜間行動のマナーについて

絶景の山の写真を撮るために留意したい夜間行動のマナーについて

山の絶景写真を撮るために留意したい夜間行動のマナーについて

前置き

アルプスは晴れてさえいれば、100%に近い確率で訪れた者に対して感動的な眺望を約束してくれる。

夏山の日中や日没は湿度も高く、大気の透明度も低いことがあるが、大気のシーイング(天体観測の際の大気の動揺やその他の原因による観測条件の良否)は真夜中や夜明け前には安定することも多い。

何度か山に登った方であればご存知であろうが、夜間気温が低下するため雲の高度も下がりガスに撮影を邪魔されることも少なくなる。適度なガスはアクセントになるため残ってほしいこともあるが…

個人的な趣向の問題もあるので、私が口を出す話ではないかもしれないが、立派なカメラを持っていて上記の時間帯に撮影を行わないのは非常にもったいないと思う。

また、カメラを持って行って山仲間の写真を撮ると喜ばれる。それにプラスして天の川など人間の目よりもカメラの表現が勝る対象やグラデーション豊かなマジックアワー、深紅に染まった圏谷のモルゲンロートなどを撮ってデータで送ってあげるとさらに喜ばれる。

おそらく理由は簡単だろう。

自分のスマホでは撮れない風景の感動を共有・記録したいからだ。それをSNSにアップすればさらに賞賛が得られる。

最近のスマホは優秀なので、日中の風景は素人目には一眼との違いがわからないことも多い。

特に日中パンフォーカスで撮られた写真を比較して、一眼で撮ったものを当てろと言われても、プロでも百発百中は難しい分野だろう。

特にスマホの補正技術は日々進化しており、撮ってだしの一眼のjpegよりも色彩豊かでシャープネスの効いた写真を吐き出すこともある。特にiPhoneなどは明暗差の激しい場面では自動でHDR機能を設定し、破綻のない絵を出してくれる。

素人において白飛びを緻密に計算し、なおかつ絵が破綻すると判断した場合にはカメラのHDR機能を瞬時に選択し、なおかつ手持ち撮影のHDRでブレを起こさない高性能なカメラを持っている。そんな人が何人いるだろうか。

rawで撮れば後から調節できるが、白飛びは直らない。それに、スマホのHDRの方が人間の目に近い自然な写真が撮れたりする。

だから、単純に私の腕が拙いだけという説は置いておいて、日中のスナップショット的な風景写真において、われわれカメラ素人がスマホに圧倒的な優位を持つとも言えない環境になってきている。

人物撮影においては被写界深度という要素が関係しているため、とりあえずぼかしておけばスマホとは一味違う写真が撮れるのだが、最新鋭のスマホでは疑似的にぼかすことも可能である。

今はまだ不自然な部分や機能に制限もあるが、そのうちそれも解消されるだろう。

そうなると、スマホと一眼の差はますます小さくなる。

しかし、大型サイズのセンサーが生み出すダイナミックレンジやノイズの差と大口径のレンズを通過する光の量は物理法則に何らかのブレイクスルーが起きない限り覆されることはない。

長く前置きをしたが、夜間や薄明時間帯において写真を撮影すればスマホに対して圧倒的に優位な写真が撮れる。

それに、この時間帯に撮影された写真は撮影者の腕のアラを隠してくれるほど何を撮っても美しいのである

燕岳とテント場

 

夜間行動に必要とされるマナーは

これは私の信条であるが、山において一番尊重されるべきは山を純粋に楽しんでいる普通の登山者である。

山小屋には早朝に出発するために休んでいる方も多い。

写真は副次的な趣味であって、これによってほかの登山者の行動が阻害されてはならない。

ゆえに、写真を撮る際「特に夜間」は他の登山者に最大限配慮しなければならない。

以下に私が夜間撮影する際に配慮している点をまとめてみた。一応、いままでこれを守っていればトラブルになったことはない。

山小屋から外に出る際は音を立てずに迅速に

 

ヘッドライトや撮影道具一式は事前に取りやすい場所に置く

これは誰もが気を付けることだろう。と思っていると意外とそうでもなかったりする。

ヘッドライトを出すためにザックをごそごそ。ヘッドライトくらい事前に枕元に置けないものか。

むしろ、その予見性のなさでよく今まで事故を起こさなかったと感心する。

明かりをつけてレンズの付け替えを始めると目も当てられない。他人が横で寝ているところでやらないで談話室でやればいいのに…

会話は最小限、むしろないくらいがちょうどよい

特にパーティで宿泊している場合に問題となる。小屋は密閉空間のため、いくら小さな声でも他人は気になるものである。

しかも、寝起きのためか声のボリュームが調整できない方も散見される。

これらが連鎖反応となり、部屋全体へ伝播するともう最悪である。

パーティからパーティーへ目覚めたものに対して、ひそひそ会話が加速度的に広がっていく。

特にパーティで外に星を見に行く際に見られる現象だが、起きる時間、行動くらいは事前に打ち合わせして、会話なしで外に出られる状態にしておくとよいと思う。

もう一つ、忘れてはいけないのは帰ってきてからすぐ寝ることだ。時折寝付けないのか、床についてもずっと話している人がいる。

あたなは楽しいかもしれないが、周りは不快なのでやめてほしい。

山小屋を出るまで絶対にヘッドライトの明かりは人の顔に当てない

これも、結構無神経な人がいる。平気で明かりを他人の顔に直撃させるのだ。

足元が暗いのはわかるが、頭に明かりをつけてブンブン振り回したら絶対に他人に当たる。

配慮していない人は、自分の光は人に当たってないと思っているだろうが、絶対に当たっている。

3分間、暗闇の中でヘッドライトをつけて、頭を一切動かさずに目の動く範囲の視野だけで動き回てみてほしい。イメージはターミネーターみたいな感じだ。結構つらいことがわかるだろう。

山小屋から外に出るまでの区間で視野と光の方向性を一致させる必要はない。

手に持つか、首にかけるか、角度を調整して必要な方向だけを照らすようにしてほしい。

もう一点。あまりテントを照らさないでほしい。テン場は広いし足場も悪いので、「絶対」ということは難しい。

テン泊したことのある方ならわかるだろうが、ヘッドライトの光が直撃すると昼間のように明るくなる。

ヘッドライトを首に

 

テント場の通過の際は細心の注意を

混雑時のテン場はテントの張綱が地雷原のように張り巡らされている。

その中の一本でも、引っかかったらアウトだ。

引っかかって中の人が起きるくらいならまだ良い。(よくもないが)

最悪、テントを破壊したり、足場の悪いテント場の場合はつまずいた拍子にテントに寄りかかってテントごと落下…なんて可能性も考えられなくはない。

最近、ツエルト泊やシェルター泊、ワンポールテント泊なども流行っている。これらの張綱に引っかかれば即倒壊である。

テント場の通過の際は注意を払うことに越したことはない。

混雑時のテント場

 

撮影場所は事前の下見を

暗闇の視界が制限される中で行動するのは注意力や体力を消費する。昼間は簡単にたどり着けた場所でも夜はなかなか着かないものだ。

滑落の危険性も増大する。鎖場や痩せ尾根を通らなければならないルートは控えるのが無難であろう。あくまで趣味なので命には代えられない。

そもそも、日中に下見をしなければ撮影ポイントがわからない。

【まとめ】あくまで主役は普通の登山者

撮影時のマナーに関してはよく撮り鉄が挙げられる。

どう考えても、電車に乗る乗客や仕事をしている駅員が主役なのに必死にそれをどかそうと怒声を張ったり、時には電車のダイアに影響を与えたりする。

山においても同様のことがあげられる。あくまで、主役は星空や朝焼けに対して純粋に感動し、それを見るために山に登ってきた登山者

三脚を設置して何十分も待ったタイミングで比較明合成写真撮影時や長時間露光時に明かりを照らされて悔しいのはわかる。私も悔しい。

ここぞというタイミングで写角に入ってくる。

ただし、余程悪質な場合を除いてそれをとがめてはいけない。怒鳴るなど言語道断だ。

そんなことをすれば、その登山者の体験に泥を塗ることになる。

それは自分の首を絞めることになる。ごく一部の人間の行いが、あたかもその趣味を行うもの全体に拡大され肩身が狭くなる。

登山をしている方ならわかると思うが、無謀登山による遭難は後を絶たない。しかし、一般人の目には普通の登山者も無謀登山者も同じように映る。

それで「この間も事故あったでしょ?なんでわざわざ危ないところに行って人に迷惑をかけるかもしれない趣味をやるの?」などといわれる。

その結果、規制だの何だのという論調が主流になり、その趣味自体が委縮してしまうのだ。

写真も同じことであり、わざわざ夜中に外をうろつく人間など圧倒的なマイノリティー。悪評がついてしまったら、そのイメージを覆すことは不可能。

むしろ、写真が好きであれば映り込んでくる光や登山者をどう生かすかを考えた方が建設的だろう。

私は他人の撮った写真を見るのも好きだ。だから、山で写真を撮る人が肩身の狭くなる風潮にはなってほしくないと心から思っている。

 

 

 

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