登山中に雷にあった場合の対処法について

登山中に雷にあった場合の対処法について

山岳気象遭難 西穂高岳落雷遭難事故

長野県松本市の松本深志高校二年生の登山パーティーは、北アルプスの西穂高岳にて教員の引率による集団登山を行なっていた。この集団登山は個人での登山による危険を避けるため、希望者を集めて毎年学校が主催している行事だった。参加人数は教員5人を含む計55人。日程は、31日に松本市を出発、上高地で一泊し、1日の朝から西穂高に登山して、翌日下山、松本市に帰る予定であった。Wikipediaから抜粋

1967年に起こった事故である。松本深志高校といえば松本平で一番の進学校。

文化祭で何度か訪れたことがあるが、遺体が安置されていたという教室が今でも残っていたことを覚えている。

それゆえにこの事故は私の中で印象深い。

最終的にこの事故は11人の死者を出す未曾有の遭難事故となった。

当時は落雷に対する知識が確立されておらず、引率教員は責任を問われなかった。

それから、50年以上経つ今では、当時より雷に関する知識が進歩している。

山に登る者は、基本的な雷に関する知識を身に着けておかなければならない。

場合によっては引率責任を問われることもあるだろう。

知識とメディアが進歩した現代において、無知は罪になりうるのである。

 

西穂高岳

 

雷が発達しやすい条件

雷には種類がある。

最も頻繁に起きるのが、「熱雷」というもので、いわゆる夕立である。

太陽の強い日射で暖められた地面付近の空気が軽くなって上昇し、積雲をつくる。

上空の気温が通常よりも低いと上昇した空気の温度がいつまでも周囲より低いため、空気が上昇し続けて積乱雲をつくる。

「界雷」は寒冷前線の南下や上空を寒気が通過する場合に起きる。

日射があまりなくても、地上付近の空気が暖かく湿ってれば発生するのが特徴だ。

上記の条件が組み合わさった時に発生するのが「熱界雷」である。

この条件の時には各地で積乱雲が発生し、広い範囲で雷と大雨になる。

これらを踏まえ雷の発生しやすい条件をまとめると以下になる。

  • 強い日射があること
  • 上空に寒気が入ること
  • 前線が南下すること
  • 空気が湿っていること

このような気象条件の時には、行動中も雲の様子を観察して、積雲がある一定の速さで止まらず上空に伸びていくときは雷の発生が近いと考えるべきだ。

ちなみに、このような気象条件の時は麓では雷の注意報が出ていることが多い

積乱雲を発見したら

多くのサイトでは雷鳴が聞こえ始めてから、また落雷に遭遇してからどう行動するかについて説明している。

しかし、雷雲の移動速度は5~40km。

進行方向が重なった場合、逃げ切れない可能性もある。

雷を伴う積乱雲が接近してきた場合はすぐに避難行動を開始すべきだ。

ちなみに、雷鳴が聞こえ始めた段階では、すでに危険範囲にいると認識した方がよいだろう。

北アルプスの夕焼けと積乱雲

 

危険範囲についての認識

下記の現象に遭遇したらすでに危険範囲に入っていると認識した方がよい。

雷鳴が聞こえている

雷の聞こえる範囲は半径10㎞。

かすかにでも雷鳴が聞こえてきたら危険範囲に入っている可能性が高い。

あなたが立っているその場所は、いつ雷が落ちても不思議ではないのだ。

冷たい風が吹いている

これは地上の夕立でも経験したことのある方が多いだろう。

雷と雨が本格化する直前には気温が下がり、冷たい風が吹く。

毛の衣類が逆立ち、カラビナが音を立てて鳴る

実際この現象に遭遇したことはない。

ただし、経験豊富な人に聞くとカラビナなどの金属部品が音を立てて鳴り出すというのである。

危険範囲に入った場合の対処法

【対処法】近くに安全な空間が「ある」場合

鉄筋コンクリート建築、自動車(オープンカーは不可)、バス、列車の内部は比較的安全な空間です。また、木造建築の内部も基本的に安全ですが、全ての電気器具、天井・壁から1m以上離れれば更に安全です。気象庁ホームページから抜粋

これに山で該当するのは山小屋くらいしかない。

それでは山小屋以外で雷に遭遇したらいかにすべきか。

 

【対処法】近くに安全な空間が「ない」場合

近くに安全な空間が無い場合は、電柱、煙突、鉄塔、建築物などの高い物体のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れたところ(保護範囲)に退避します。高い木の近くは危険ですから、最低でも木の全ての幹、枝、葉から2m以上は離れてください。姿勢を低くして、持ち物は体より高く突き出さないようにします。雷の活動が止み、20分以上経過してから安全な空間へ移動します。気象庁ホームページから抜粋

山で考えられるのは想定しうるのは、木くらいであろうか。

ケルンや標柱も突き出してはいるが、高度が足りない。

頂点を45度の角度で見上げ、その物体から4m(木の場合はさらに枝葉から2m)離れるということが重要である。

この空間で、姿勢を低くして(持ち物は自分より突き出さない)やり過ごす。

4m(木の場合は枝葉から2m)というのは雷の側撃を避けるためである。

側撃とは、一度木などに当たった雷が枝葉などから人間に対して再放電される現象である。

最近は仰角45度という説に異論も唱えられ、物体から30m以内に避難すべきとの説もある。

 

【対処法】近くに安全な空間が「全くない」場合

一般的に中部地方は標高2,500mで森林限界となる。

森林限界以上の高度では、気象条件が厳しいため、大木が育たず、見渡す限りハイマツに覆われているという状況が多い。

また、森林限界以下の高度であっても、活火山などは岩が露出し、木が育たない場合が多い。(焼岳など)

 

この場合は、

窪地や溝を探す。ハイマツ帯に逃げ込み「祈る」。

可能な限り、自身の高度を低くし運に懸ける。

この際、全滅を避けるためにパーティーはバラバラに避難すべきだ。

 

実際に落雷に合う可能性は、1000万分の1(平地も含む)。

宝くじで1等を当てる確率と同じである。

雷に直撃して死亡する確率は5分の4。

直撃さえしなければさらに確率は低くなる。

 

そう考えると、雷に当たって死ぬ方が難しいのだ。

 

ただし、山岳地帯という特殊環境にいるので決して油断はしないように。

上記の統計は平地での落雷件数も含む。

 

 

落雷時に危険な場所は

稜線、山頂

開けた場所では自分が一番高く、雷の目標物となりやすい。

また、近くに逃げ込める場所もない。

森や林の中

木が乱立しているため、安全範囲を図ることが困難。

枝葉から4m以上離れる場所も見つかりにくく、側撃を受けやすい。

テントの中

テント内部のポールから側撃を受けやすい。

避難する際の姿勢は

しゃがむ、手で両耳をふさぐ(持ち物は自分より突き出さない)。

地面に伏せるというのは誤りである。

近くに雷が落ちた場合、しゃがんでいれば足から入り足から抜ける。

しかし、伏せていれば心臓などの重要な臓器を雷が通り抜ける可能性が上がる。

 

最後に

容易に気象情報が手に入る昨今、落雷事故は人災であるという風潮が強くなっている。

雷が落ちるか否かは運によるところが大きいが、事前に予測可能であろうということである。

特にリーダーや引率を引き受ける場合は事前の気象情報をチェックし、麓で雷が起きやすいと予報されているときは登山をやめるのも一つの選択肢だろう。

しかし、夏はほとんど大気が不安定。それでは登るチャンスがなくなってしまう。

登る際には、積乱雲の動きを逐一観察し、万が一の際には山小屋で停滞、逃げ場を探しておくのも一つの方法だと思われる。

 

 

 

 

 

 

登山・登山道具カテゴリの最新記事