菊池哲男氏の山岳写真集「アルプス星夜」を読んで

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菊池哲男氏の「アルプス星夜」を読んで

山岳夜景という分野について

山で写真を撮っている人にとって菊池哲男さんの名前を知らない人間はいないだろう。

自分のように「山行のついでに1~2枚いい写真が撮れればいいや」くらいで写真を撮っている人間でも知っている。

 

この写真集のテーマは山岳夜景ということで、一般的な山岳写真集とは異質なものとなっている。

これは私、一個人の感覚だが、山岳夜景という分野は山岳写真の王道からは外れており、多くの山岳写真集の中では、山岳夜景は日中に撮られた山岳写真たちの中でアクセントとして使われることが多いように思う。

この写真集はほとんどの写真が夜景写真で占められており、その点で異質だと思う。

しかし、私が山で撮られた写真の中で一番好きなのが、この時間帯に撮られたものであり、この写真集は私の需要の中をぴったりと満たすものであった。

デジタル写真について

菊池氏は2008年にも夜の山をテーマにした「山の星月夜」という写真集を出している。

今回のアルプス星夜との違いはデジタル写真とフィルム写真の比率の違いとの事である。

山の星月夜」では、デジタル写真が3分の1以下とのことだが、「アルプス星夜」では9割がデジタル写真。

 

私はデジタル写真からカメラに興味を持った人間なので、目がデジタルに最適化されている。

色々な写真を見ても、デジタル写真ばかり目に留まってしまう。

デジタル写真は、フイルム写真では不可能であった夜景の表現を可能としており、そこに惹かれるのだと思う。

俗に星景といわれる分野はデジタルの普及なしには、ここまでメジャーになることはなかったと思う。

フイルムだと赤道儀なしで天の川を写し止められないし、赤道儀を使うと地上の風景を止められない。

 

しかし、デジタルで山岳夜景を撮るにあたって参考になる教科書は少ない。

多くの写真集はフイルム比率が高かったり、山岳夜景自体をメインのテーマとしておくことが少ないからだ。

フィルムと違ってデジタルはまだまだ発展途上の分野であり、今後さらに性能の高いカメラが発売され、さらに星景写真(山岳夜景)という分野は活発になるだろう。

もしかしたら、十数年後にはスマホで天の川が写せる時代が来るかもしれない。(スマホという概念もないかもしれないが)

プロとしてこの分野のみの写真集を出している人は今現状ほとんどいない。

これから、ますます星景写真(山岳夜景)が興隆したら、この写真集は山岳夜景の嚆矢というか、バイブル的なものになるのではないかと私は勝手に思っている。

 

撮影場所について

登ったことのある人ならわかると思うが、「あっ、あの場所」と思うところも多い。

意外と宿泊地の近くで撮られているし、今まで自分が撮影したことのあるところで撮っていることもある。

同じ場所で撮っていても、やはりプロの切り取り方は違うし、参考になる部分が多い。

 

もう一つ、この写真集を見て勇気づけられるのは、プロでも夜に移動するのは難しいのだなという所である

なんだか、自分は宿泊地の近くで写真を撮っていると人と同じ構図になる不安を感じる。

しかし、この写真集の宿泊地で撮られた写真をみると技術やタイミングを極めれば、人と同じ場所で撮ったとしてもオリジナリティーを出すことが可能というか、無理に長時間の夜間行動しなくても人を感動する写真は撮れるという安心感を感じる。

写真の方向性を、誰も行ったことのないところを開拓することではなく、自分の技量にあった場所で最善を尽くしてみるという方向に修正してくれた。

「デジタルカメラで広がった山岳夜景」について

夜の空を支配するのは数えきれない無数の星ではなく、まぎれもなくたった一つしかない月だと思う。

最後の方のページでは「デジタルカメラで広がった山岳夜景について」ということで、山岳夜景を撮る際のポイントやポリシー、苦労についてが述べられている。

趣味でやっている人間とは比較にならない苦労だ。

特に月について読んでから、写真集を見直すと、月の捉え方が変わる。

個人的には「邪魔だなー」としか思っていなかったが、その位置を緻密に計算することによって、さらに山岳写真を昇華することができると納得した。

最後に

星景写真はデジタルカメラの普及によってメジャーな分野となりつつある。

私はあまり好きではないが、赤道儀を使って撮った写真と地上の風景を合成する新星景という分野もあるらしい。

そんなもん、離島でも行って天の川の写真だけとってきて、後からそこら辺の風景に合成すればいいじゃないかと思うが、やってる人にはやってる人なりの論理があるのだろう。

もともと、天体写真という分野自体、レタッチとか合成とかコンポジットが当たり前なので、それと従来の風景写真を組み合わせる星景写真にはまだまだ議論すべき余地があるのだと思う。

「デジタルカメラで広がった山岳夜景について」を読んでいただければわかるが、この写真集は一枚撮りを基本としている。

風景写真としてみるならば、コンポジットや合成は邪道であり、もしこの写真集がそれを駆使したものであったなら私は購入しなかっただろう。(私は日週運動写真にコンポジットを使うのはいいと考えているので、そこが菊池氏とは違う意見だが)

コンポジットや合成がないので、違和感なく安心してみられる。

それがこの写真集のいいところだと思う。

 

 

 

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